8月2日購入。
アルバムのレビューは初なので色々とどうしよう。
1.『荒地』
イントロは9ミリの中でも群を抜いて印象的。少しリバーブ気味? 空間系エフェクターの使い方についてはこの曲に限らず今作かなり上達していると思う。
しかしそれにも増して強烈なのはアウトロか。同じようなリフでここまで決定打を打てるとは。
歌詞もシンプルでよい。
『砂の惑星』や『Living Dying Message』でも感じていたけれど、本当にこのバンドは砂地とか荒野とかが似合う。
掴みとしては最高でしょう。
1周して『カモメ』から続けて聞くとフェードインがスムーズなのも素敵。
2.『Survive』
なんだこの音作りは!
と驚いてもらいたかったのだろうなあという感じ。滝氏のドヤ顔が目に浮かぶ。流石です。
何故だかジャンヌダルクを思い出した。似たような曲があったかな。
珍しくサビの演奏が比較的シンプル。
曲構成そのものは『(teenage)Disaster』のような初期曲にも通ずるか。
1stを彷彿とさせる、みたいな触れ込みがあった要因のひとつだろうというところ。
3.『新しい光』
先行シングルでしたが聞いていませんでした。
周囲の人の評価が見事に真っ二つになっていた曲。確かにやっていることは相変わらずともとれるし、そのくせして特徴的なものもなさそうということはできる。
しかし相変わらずというにしてはレベルが高くなったと思う。重低音が襲ってくる感覚は音作りの工夫だけではないはず。
とりあえずドラムがおかしいことはよくわかった。
メロの歌詞がもっとストイックだったら私として評価は上がったはず。
4.『Face to Faceless』
歌詞の解釈次第では私の哲学思想にも通ずるので無視できない曲。
曲中の『おれ』『おまえ』の捉え方次第ということです。
鏡に映る自分には顔がありますが、鏡に顔を映している自分の顔を自分で見ることはできない。
自分自身というのは『顔の無い男』と考えることもできるのです。
加えて、鏡に向かっての自問自答というのは人間の発狂の典型。
精神的グロさというのか、ホラーというのか。『命のゼンマイ』あたりでその片鱗は見せていましたが、9ミリに根ざしている『ホラー的哲学観・死生観』というのは今作顕著だと思います。
例えば今回の音作りが洋楽メタルに近しいものになっているのもその一端を担っているのだろう、と。
海外のメタルには『死』を印象付けるものも多く(というか私が聞いたことのあるのがそんなんばっか)、それは人間の生命活動の根底にも素手で触れてくる代物。
この曲の音の感じが『妖艶』とか『エロティック』とも表現されるのはまさにそのホラーによるのでしょう。
その意味でラストの和彦シャウトは非常に効果的。
5.『銀世界』
で、この流れ。
メロの最中のギターが雪景色の印象と本当に合っていて上手い。音作りとアルペジオの作り方とギターの絡め方が綺麗。
反して間奏であるとかサビであるとかはかなり荒々しい感じ。それこそHelloweenとかを連想させる。そういった要素の噛み合っているのが相乗効果というのかひとつの雰囲気を作っている。
ところでこれにしろ『カモメ』にしろ、北国を連想させる曲が散見されるのはどういうこっちゃ。
6.『Muddy Mouth』
超ずっしり。和彦作曲だけあってか特にベースがイントロからものっそい重い。
9ミリのメタル方面進化を決定的に印象付ける存在で、いつもの高BPMさえも投げ打って鈍重な曲作りをしているのは『The Time Of The Oath』とかにも通ずるか。
初見ではイマイチでうるさい印象しかなかったものの、何度か聞くとしっくりくるようになった。
7.『星に願いを』
激しくない『Supernova』的な?
9ミリは星とか宇宙を扱うのもうまいですよね。バンプのように天体そのものを扱うというより、それを眺めるだけの『地上の人』として歌う。
『眺めるだけ』の切なさに特化したのがこの曲。
珍しく3拍子か、と思ったけれど6拍子と思うのならむしろおなじみか。
バスドラに注目するとなかなか楽しい。
何が凄いってこのスケールで3分無いということ。良い曲は時間を引き延ばすというのが私の持論ですが、それの最たるところでしょうか。
ラストの歌詞がもっと印象的ならなあ。『たった今~』という文章は歌詞として聞くのが少し苦手。
8.『Monday』
月曜日が嫌いなのはよくある話というか、月曜日だから憂鬱と歌う歌は多く、この歌もそれに漏れずというか、曲名の段階からなんとなく察しはつきましたとも。
そういう暗黙の了解を前提にしすぎかなという印象。
楽器を使うことに重きを置いているかと思いきやボーカルソロになるところもあり。
結局のところ、前にある曲が曲だけに少し冗長だった感じ。
9.『Endless Game』
終始とにかく『We are innocent』を思い出させる。
あちらよりはこちらのほうが開き直っていて好きかな。
アウトロは少々余計な気もしたものの勢いで押し切ったなあ。
どうでもいいのですが、菅原氏の外見とこの曲の内容からは長田悠幸『Run day Burst』のギャンブルのシーンしか思いつかn(
10.『Scenes』
事前に友人に勧められていたのはこの曲だったかな。
なので事前に聞いていました。ははは。
ミュートカッティング上手くなったなあ。『Termination』とは比にならない。
歌詞は少し狙い過ぎな気もするものの、モチーフの選び方からしても素敵だと思う。
アウトロで拡散させてラスト1曲につなげる手法は『The World(album ver.)』にも似たようなところがありますかね。
11.『カモメ』
凛として時雨でいうところの『mib126』的存在。
どこかで聞いたことがある、この雰囲気は知っている、と思うもののその出所がつかめない。
他でもないこの9mm Parabellum Bulletというバンド以外に既視感の元手が想像できない。
どういうことなのだろう。
考えてわかった。『farther』だ。
あの2分にも満たない曲の切なさを、そのまま引き延ばして今の9ミリの音で演奏したらこうなる。
事実、この曲の構想自体は昔からあったらしいことをどこかで聞いた気がする。
ゆえにこの曲は9ミリの『根源』的部分を見せている曲であるといえる。
他の楽曲と一線を画しているようにも感じられ、かつどこかよく知った空気を感じもするのは、それが原因なのだろう。
この曲が作れたなら当面彼らに枷はないのでしょう。
ためらうことなく好きな曲を作るがいい。
とか言ってみる。
○総評
『深化』とか『原点回帰』とかいろいろ耳にしますがどれも適切でしょう。
何でも吸収していくという点はやはり今の時代のバンドに最も求められている能力なのかもしれません。かつ、そのさ中でそのバンドらしさを失ってはいけない。
その意味では成功しているといえる一枚。
このタコ足配線的な手の伸ばし方で今後どうなっていくのか、どこにコンセントを繋いでいくのかは気になりますね。
とにかく元々上手かった演奏が個々において更にレベルアップしているので、あとはそれをどう使うのかという領域でしょう。かみじょう氏が師匠にしごかれたというのは本当なのか……
個人的な要望としてはもっとホラー方向へ。
ダサいのを極めて逆にかっこいい、みたいのはもしかしたら今後出るのかもしれませんが、湿っぽくて生々しい感じももっと先を目指してほしいなあ、ということは、今回を聞いたからこそ言えることなのでしょうが。
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